【美しい空間の作り方】 陰影礼讃 ~明暗を創り出せ~

間取りの考察/floor plan
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はじめに

2022年にネイエ設計さんでシンプルでナチュラルな和モダンの家を建てました、じょりぱです。

インターネットが発達した現在において、家を計画する際、施主もブログやYoutubeなどで数多くの情報を得ることができます。

特に断熱性やコスト、太陽光発電などに言及している記事は多く見受けられるのですが、こと”デザイン”に関してはまだまだ情報が少ないのではないでしょうか。

アメリカでの生活を経験した私じょりぱは、海外にいたからこそ見える日本独自の美に魅了され、帰国後和モダンな家を建てるまで至りました。

その過程で行ったデザインについて多くの考察を、これから家を建てられる皆様と共有できたらと思いこのシリーズを立ち上げました。

シリーズ名は美しい空間の作り方シリーズ。今回は”陰影礼讃”と題し、暗い場所の大切さを考察してみようと思います。

「明るい」には「暗い」が必要!?

早速ですが、良くどんなお家を建てたいですか?という質問に対し、

「明るいお家!!」

という回答を目にします。

しかし「明るい」とはどういう状態でしょうか。

本当に明るいだけを目指すのであれば、デパートのように蛍光灯でビカビカにしたり、シーリングライトで空間全体の光量を挙げれば良いのですが、果たしてそれが望まれている「明るいお家」なのでしょうか?

こと住宅における「明るい」とは、多くの場合絶対値ではなく相対値を言っているのだと思います。

暗いところがあり、初めて明るいと感じるのです。

例えば、私が趣味にしている透明水彩画の話をしましょう。

透明水彩は白い紙に絵を描いていきます。

その最初の白い紙をみて、誰も「明るい、眩しい」なんて言いません。

しかし、その周りを暗くしていくと、なぜか紙の白が眩しく光り出すのです。

上手に絵を描けば、紙の白は太陽にまでなります。

↑私が尊敬する水彩画YOUTUBER柴崎大先生の作品を模写しました。

例えばこの作品をご覧ください。太陽の白は紙の白のままです。「明るく」ないでしょうか?

この明るさの出し方にコツがあるのです。

そして、ここまで読んでくださった方はもうご明察いただけると思いますが、それは「暗さ」以外の何物でもありません。

周りを暗くしていくことで相対的に太陽が明るくなっているのです。

住宅でも同じことが言えると思います。

暗い空間を意図的に作っていくことが、明るい空間をつくるコツなのです。

「暗い」におススメの空間

さて、暗い空間を作ることが大事なのはわかりましたが、むやみやたらに暗くしていけば良い訳ではありません。

どこを明るく見せたいか?を考えることでどこを暗くすればよいのかがわかります。

明るくしたい場所は施主によって異なると思うので、この章では我が家の例を挙げたいと思います。

①明るくしたい場所:リビングソファ⇒暗くする場所:ヌック

我が家のコンセプトとして、LDKに家族が入れるよう、あちこちに座れる場所を作りました。

その中でも、気分によって座る場所を変えられるように、リビングのソファは午前中の明るい光を沢山取り込む場所、ダイニング横のヌックは少し奥まった場所にあり、涼しく暗い場所と特徴を意図的に変えました。

明暗を強調するため、明るいソファには白を、暗いヌックには紫を採用したところもポイントです。

影となる部分には、冷たさを感じる青みを加えるのがおススメです。

水彩画においても影の色は黒ではなく青なのです。

↑ソファがあるリビングには、東~南から午前中の光がしっかりと入るように窓を開けました。
↑一方ヌック(写真右)には冬場でも直射光が入らないところに配置し、籠もれる空間を作りました。

明るくしたい場所:階段⇒暗くする場所:廊下

廊下は暗くする絶好ポイントです。廊下を意図的に絞り、LDKや二階、洗面所などにつなげることで、それぞれの部屋が相対的に「明るく」なります。

ここでは暗い廊下と明るい階段の対比を示します。

階段の上部から光を取り込むことで、光に導かれるように二階に上がります。

暗いところから見上げる明るい光の筋は、まるで天国への階段のようになります。

人によって好みはありますが、他にも、玄関、ウォークインクローゼット、和室、寝室、、、などなど、暗くしやすい場所は沢山あります。

「どこを明るく見せたいか」を考え、そこから「どこを暗くするか」を考えるとより強弱がある良い空間が作れるでしょう。

例えば、玄関を暗くすると、LDKに入った時の明るく開けた感じが強くなります。

これもオシャレハウスで良く使う手ですよね。

部屋を光で区切る

暗い場所を作る効果は近くの空間を明るくするだけではありません。

部屋を柔らかく区切ることも可能です。

例えばこれはダイニングとキッチンの例です。

我が家では光が苦手な妻のために、LDKをL字に配置し、敢えてキッチンの光量を落としました。

その結果、空間的には繋がったLDKですが、もやっとキッチンとダイニングの空間を分けることができ、広いLDKの中で強弱をつけることができのです。

もっとはっきりした例を挙げます。

今度はキッチンを逆側からみた写真です。

キッチンの奥にはパントリーがあるのですが、空間を更に絞ることにより、物理的には繋がっていますが、異なる部屋のように見せています

キッチン近くにあるスタディーコーナーも同様です。少し暗めなキッチンエリアに対し、スタディーコーナーの部分にピンポイントで光を取り込むことで、異なる部屋が出現します。

このような技は、

・空間が広く見える

・空間に強弱をつけられる

だけでなく、

・建具が無い分コストカットになる

といったメリットも生まれてきます。

まさに一石二鳥です。

空間が大きくなると空調的には不利なので、バランスを見ながらにはなりますが、

上記のようにメリットが多くありますので、積極的に狙っていくと良いと思います。

おわりに

最近、商品力を訴求しやすいことから大空間長方形型LDK+南側全面窓という組み合わせをよく見かけますが、上手く空間を作っていかないと、家具を置いたら意外と狭く、単調に感じてしまう恐れがあります。

大空間自体は勿論良いのですが、上手く明暗をつけていくことで、より強弱のある大人な空間づくりを目指してはいかがでしょうか。

「設計」というのは、ある意味お金をかけずに空間のレベルを上げられる唯一の手段です。

よい設計士を見つけるのは勿論ですが、施主側としても設計の肝を知っておくことに損はないでしょう。

なお、光には方角によって性質があり、どんな光を入れていくかを考える楽しみもあります。

光の性質を考察した以下の記事も是非一緒に読んでみてくださいね!

【美しい空間の作り方】光の性質を考える – 和モダンなお家のつくりかた (japanese-modern.com)

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